政治資金規正法

世相

歴史は繰り返すではないが、今また政治と金が問題になっている。政治家に求められるのは、政治家としての資質より、地盤、鞄、看板などで、それを継承した世襲議員が横行している。中でも金が一番問題であろう。

私は歴史が好きで、政治と金と言えば田中義一であろう。今の政治家もどこかからお金を貰ってくるのだが、田中義一のことをウイキペデアから引く。1924年(大正13年)の第2次護憲運動の際に立憲政友会は分裂して第1党の地位を失った。総裁であった高橋是清は辞意を表明して後任選びが始まった。だが、最有力候補であった横田千之助は分裂を惹き起こした当事者ということで辞退し、やむなく党外から総裁を迎え入れる話となった。

当初、伊東巳代治と田健次郎の名前が挙がったが、両者ともかつて内紛で政友会を追われた経緯があり、これを辞退した。次に官僚出身ながら国民の人気がある後藤新平を迎えようとしたものの、後藤はかつて関東大震災後に自分が立案した帝都復興計画を政友会の反対で潰された経緯からこれも拒否、唯一就任に応じたのが田中であった。

1925年(大正14年)4月7日、田中は宇垣陸相と会見して現役退役願いを提出(治安警察法第5条により現役軍人は政治結社に加入できないため)。同年4月10日、予備役に編入した。将来は元帥ともいわれた田中であったが政界への転身を図り、高橋是清の後の政友会総裁に就任した。ここからが問題である。

田中は就任の際、300万円の政治資金を持参金としたことから、陸軍機密費から出たものではないかとする陸軍機密費横領問題が浮上。告発を受けた東京地方裁判所検事局が取り調べを行ったが、1926年(昭和元年)12月27日、証拠不十分で不起訴処分としている。(概要:政治資金の出所について尋ねられた田中は、神戸の実業家から借りたと言っていたが、シベリア出兵の際の陸軍機密費を横領して実業家に渡し、それを公債に替えて田中に渡したものではないか、という疑惑である。シベリア出兵で露軍から捕獲した1000万ルーブル相当の金塊が、朝鮮銀行経由で内地に輸送され、宇都宮の倉庫に保管されていたが放火されて行方不明となり、これも持参金になった疑惑がある。

1926年(大正15年)3月4日に衆議院で憲政会の中野正剛代議士がこの問題を取り上げ、帝国議会でも審議された。告発を受けた東京地方裁判所検事局は受理したものの、担当した石田基次席検事が、同年10月30日に大森駅 -蒲田駅間の鉄橋下で変死体となって発見され(検事局の動き:吉松検事正は記者会見し検視の結果「断じて他殺ではなく過失であった」として処理し遺族からの司法解剖の要請を拒否、その日の内に遺体を火葬場へと送り処理した。)、手続は延び延びとなった。結局、同年12月27日、後任の検事正が証拠不十分で不起訴処分とした。)また、在郷軍人会を票集めに利用したとする疑惑もあった。真相は不明であるが、在郷軍人会の育ての親である田中の政友会総裁就任及び対立する憲政会(後に立憲民政党)の軍縮政策が在郷軍人の投票行動に影響したのは間違いなく、高橋前総裁時代に出されていた軍部大臣の文官化論が就任直後の田中による「鶴の一声」で否定されるなど、党の政策が軍備強化・対外強硬路線へと転換する。

戦後も政治資金の問題は続いた。「田中金脈問題」、「リクルート問題」等が起こりこれもウイキペデアから説明をする。

大日本帝国憲法の発布と同時期の1890年に設置された集会及政社方は政社結社時の届出方法や秩序を妨害すると見做された結社は内務大臣がこれを禁じることができることを定め、また女性の結社への参加を禁じるなどしていたが、収支報告等に関する規程は特に設けられていなかった。この集会及政社法は、治安警察法(明治33年3月10日法律第36号)により廃止されたが、基本的な内容はそのまま引き継がれ、女性の結社への参加禁止を1922年の改正で削除、労働組合を実質的に禁止する条項を1926年の改正で削除したほかは改正されず、終戦直後の1945年11月にGHQ指令に基づき、ポツダム勅令により廃止された。

本法は、第二次世界大戦後の混迷した政治情勢のもと現出した政治腐敗と群小政党の乱立に対処するため、GHQの指導により1948年に制定された。当初、内務省が政党法の立案を試みたが成案に至らず、その後国会での各党間での協議を経て、最終的にアメリカ合衆国の腐敗行為防止法をモデルとする政治資金規正法として成立した。制定当初は政治資金の収支の公開に主眼が置かれ、寄附の制限は設けられていなかった。

制定後、本法は長期にわたり大きな改正がなされなかった。1967年5月23日、自治省は政治資金規制法案を自民党に提示し、党側は難色を示し、手直しのすえ、6月16日政府は国会へ提出し、自民党の審議引き延ばしにより審議未了で廃案となった。しかし、田中金脈問題を契機として、1975年に全面的な改正が行われた(三木内閣時)。この時、はじめて寄附の制限が導入され、同時に政治団体の収支公開も強化された。

1988年に発覚したリクルート事件を機に、選挙制度と政治資金制度の抜本的な改革を一体のものとして行う「政治改革」が大きな政治課題として認識されるようになった。1992年、宮澤内閣時における「緊急改革」として、政治資金パーティーに関する規制、政治団体の資産公開、政治資金の運用の制限などが新設された。

1994年、細川内閣の連立与党と自由民主党の合意により成立したいわゆる政治改革四法のなかで、選挙制度改革・政党助成制度の導入と軌を一にして大幅な改正がなされ、企業・団体からの寄附の対象を政党(政党支部を含む)と、新たに規定した資金管理団体に限定した。また、法違反に関する罰則が強化され、有罪確定時の公民権(選挙権及び被選挙権)停止規定が制定された。

また本法の附則には、1999年以降に「会社、労働組合その他の団体の、政党及び政治資金団体に対してする寄附のあり方について、見直しを行うものとする」ということが定められている(1994年2月4日法律第4号第10条)。

近年の改正

・2005年、汚職事件の日歯連闇献金事件を機に、政治資金団体に関する寄附の出入りについては原則銀行や郵便振込み等で行うこと、また匿名での寄付や現金での寄付に関しては各都道府県への報告しその金額を国庫へ納付することが義務づけられた。日本が国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約に署名し、国連腐敗防止条約への署名も控え、政治資金等の流れの透明化が必要であったことにも関連していると思われる。

また、政党及び政治資金団体以外の政治団体間の寄附の上限(年間5000万円まで)が設けられた(それまでは無制限)。

  • 2007年、事務所費問題を受け、資金管理団体による不動産取得の禁止や資金管理団体の収支報告義務の強化を内容とした改正が行われた。2008年、国会議員関係政治団体に関して、全ての領収書の開示や第三者による監査義務付けを柱とした改正法施行(2009年分の収支報告書から適用)。

・ 2024年、自民党派閥の裏金事件を受け、議員の罰則強化を主とした改正が行われた。収支報告書に議員本人の「確認書」の添付を義務づけ、確認が不十分だった場合には公民権停止の対象とする。また、パーティー券の代金は銀行口座への振り込みに限定し、パーティー券の購入者の公開基準額も現行の「20万円超」から「5万円超」に、引き下げた。

問題点 

政治資金は政治活動を目的とした資金であり、政治家にはこれとは別に給与(歳費)が支払われていて、また政治団体は法人税が非課税など数々の税制優遇を受けている。政治資金の原資は税金(政党交付金など)や税控除(送り手)・非課税(受け手)を受けている寄付金・政治献金などである。

それなのにも関わらず下記のような問題が存在している。

・ 政治資金規正法には支出についてほぼ規制は存在しない。このため政治活動と全く関係のない、使われ方(私的流用・不正蓄財)も多くなされている。

・ 政治家の親族への支出に対しても規制されていない。このため政治資金が親族や親族が関係する団体に支払われマネーロンダリングを経て政治家本人・親族の個人資産となる。

・ 政党交付金などの、用途を一部規制されている資金も迂回することにより自由に使うことができる。例えば借金の返済が認められていない政党交付金も自身や親族の政治団体・会社を経てマネーロンダリングすることにより寄付金として借金返済に使われている。

・   政治団体を継承しても相続時・贈与税は一切かからない。このため議員(親)が自身の資産を全て政治団体に寄付することにより二世議員(子)は親の資産を非課税で相続している。

・   政治団体の解散後に政治資金の処分に関する規定はない。このため事実上政治家の個人資産となってしまう。

・   1万円以上の領収書の公開義務は国会議員の政治団体や国会議員関係政治団体のみであり、他の政治団体は5万円以上からが義務である。このため国会議員の親族の政治団体を迂回させた資金還流や首長・地方議員などの政治資金の使途は不明になる。

・   調査研究広報滞在費、立法事務費、政治活動費などは使途を、公開報告をすることを義務付けられていない。そのためどのように支出されているか不明になる。

・   自身の販売物を自身の政治団体が購入することが禁止されていない。そのため政治資金で自著などを大量に購入し政治資金を個人資産にすることができる。

・   政治家は自身の政治団体に自身が寄付を行い、税制控除を受けることができる。このため自身の収入を自身の政治団体に寄付して課税を逃れることができる。

・   罰則規定の大半が3年で時効となっており非常に短い。加えて収支が公開されるまでの期間を考慮するとより短くなる。

・   企業・団体献金は特定の企業への利益供与にならないよう献金を受け取ることができるのは政党(本部・支部)に限られている。しかしながら政党支部の設立には基本的に規制はないため誰もが企業・団体献金を受け取る事が可能となっている(平成20年度:政党支部届出数、自民党7726、民主党552、公明党440、社民党292)。以上である。

自民党派閥を巡る政治資金パーティー裏金事件の実態解明が進まない中で決まった衆院解散・総選挙。新内閣発足間もない臨時国会で解散にかじを切った石破茂に落胆の声は大きい。内閣支持率は過去最低の20%台であるそうだ。過去何度も同じような事件が繰り返してきたことを今の議員は知っているのか。自覚しているのであろうか。政治に関わる金だけは課税が甘い。世襲が多いのも政治家は待遇が良いのであろう。国会議員の3人に1人は世襲だそうだ。選挙は欠かさず行っているが、昔地元の市会議員選挙で、農家をやっている議員が訪ねてきた。言った言葉は「今回の選挙で当選すれば議員年金を貰えるんだよ。頼むよ」である。何のために議員をやっているのか。驚いた。今の国会議員も似たようなものであろう。選挙が虚しい。

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