親しくしていた先輩のことを書く。お婆ちゃんと奥さんと子供夫婦で幸せそうに暮らしていたが、退職して子供夫婦に気を遣い裏に、子供のための豪勢な住宅を建てた。またお婆ちゃんのために本宅をバリアフリー化し、新築並みに改装してそれは幸せ一杯な老後が待っているようだった。ところがお婆ちゃんが間もなく亡くなられた。49日を過ぎ退職をしたことから、奥さんと気を取り直して旅行に出かけられた。その旅先で奥さんの具合が悪そうなので、旅行後病院に行ったら難病で、間もなく奥さんにも先立たれた。退職前に旅行に行っていたらと何度も言われた。悪いことは続くものである。
でも子供夫婦がいるので、少しは紛れているかと訪ねてみると、一人で酷く憔悴されていた。暗い部屋でお茶を出して貰いながら話を聞くと、子供夫婦が家を出たと言う。近くにアパートを借りて住んでいるとのことだ。先輩は本当に温厚で誰にも優しい方である。子供夫婦の家を離れた理由も思いつかないという。お嫁さんとも関係は良好だったそうである。他人には計り知れない何かがあるのだろう。豪勢な家2軒に一人で住まわれ掃除が大変だと言っておられた。
またお邪魔すると言い、お宅を後にしたが、豪勢な家2軒にお一人で過ごされる先輩に、声のかけようも無かった。退職されるまでの幸せ一杯な生活、そして楽しみにされていた老後の計画が一変してしまった。家族とは何だろうか。日々の生活とは何だろうか考えさせられた。