昔下宿していた時お世話になったお婆ちゃんが、布団に寝ながら、競馬を見て馬の走るのを、綺麗と言っていた。当時の古いテレビで画像は粗く何かが走っているようにしか見えなかったが、お婆ちゃんには馬が綺麗に走っているように見えたのだろう。毎週土曜日、日曜日15:00から15:40ころまでテレビで競馬を見る。そして私も馬の走りを、または馬群の走りを優雅というか,お婆ちゃんの言っていた綺麗と感じるようになった。あるときから武豊を応援するようになった。特に理由があるわけではなく好きになった。5位以内に入れば賞金が貰え,その日の初戦からの順位を調べ今日はいくら貰えたかと、人の懐の余計な心配までする始末であった。2013年のダービーで武豊はキズナで制した。元々、キズナには佐藤哲三が乗っていたが、2012年佐藤哲三の落馬による、正に生きているのが奇跡と呼ぶに相応しい大怪我で、武豊に乗り変わったのである。キズナは2015年引退するまで幾多のレースをこなし,武豊、佐藤哲三、キズナの絆は強いものであったと言われている。
2011年の東日本大震災で、その後「絆」という言葉がよく使われるようになった。この「絆」という言葉の響きに,何か強制というか,そう考えるのが当然と思わせることに嫌な感じを覚えた。人を愛すること,人を想うことは自然な感情であって,押しつけられるものでない。被災者と絆をつなぎ、支えるのが当然との風潮に違和感を覚えた。被災者の支援は国がやるのが筋で、その上で国民がそれぞれの想いで、被災者のことを考えるのが「絆」の自然な在り方と思う。東日本大震災直後、福島を訪れた人が土産に貰った福島の物を、SAのゴミ箱に捨てていたとの話は複雑な思いで聞いた。
復興特別所得税(東日本大震災からの復興財源に充てるため)が、2013年1月1日から2037年12月31日まで、通常の所得税に上乗せして徴収される。この復興特別所得税は忘れられがちである。
最近能登地震が起きて、大変なことになっているが、被災者はこの寒い中でどうしているのであろうか。今日の新聞の一面が、災害関連死の2割が障害者の記事があった。痛ましい。そして今後高齢化・過疎化の進んだ能登はどうなるのであろうか。また復興特別所得税を取るのであろうか。それならば大坂・関西万博を中止し、その資金と作業員を能登に向けたら良いと思う。そして東南海地震などのさらなる大きな震災が起これば、能登、東北は忘れられてしまうのではないか。能登のこれからは想像も出来ない。また東北の復興は道半ばであり、記憶が薄れようとする今、自然な形の東北、能登への「絆」を感じたい。毎週土日は武豊と馬の走りを華麗と見ながら、東北、能登への「キズナ」を思い抱いている。