原発の利権とは、原子力発電を推進することで得られる経済的・政治的な利益のことである。原発の利権には、電力会社や原子炉メーカー(東芝、日立など)、建設会社、研究機関、政治家など、さまざまな関係者が絡んでいる。原発の利権は、日本では「原子力村」と呼ばれる特殊な社会集団を形成しており、その体質は閉鎖的で自己保身的と批判されている。原発の利権は、原子力発電所の建設や運転、廃炉に至るまでの100年に及ぶ長期間にわたって分配されるため、非常に巨大で安定した産業となっている。原発事業者は、原発は高い初期投資を必要とするが、一度建設すれば燃料費が安く、安定した収益を得ることができ、また、原発の建設や運転には高度な技術や人材が必要であり、事業者はそのノウハウを独占することで競争力を高めることができる。原子力関連産業は原発の建設や運転には、多くの部品や材料、サービスが必要で、これらを提供する原子力関連産業は、原発の需要に応じて売上や雇用を増やすことができる。また、原子力関連産業は、政府や事業者と密接な関係を持ち、政策や規制に影響を与えることができる。また建設や保守に従事する下請け企業や地元産業が多数存在し、これらの企業は、原発から得られる収入や雇用を確保するために、原発の存続や拡大を望んでいる。
電力会社は、長年にわたって自民党や公明党などの与党に多額の政治献金を行ってきた。これは、原発の推進や規制緩和などに対する見返りと見られている。もう一つは、地元自治体への交付金で、政府は、原発を受け入れる自治体に対して、電源立地特別措置法に基づいて交付金を支給している。これは、地元住民の理解や協力を得るための措置であるが、一部では「買収」とも批判されている。
私の知人の地元に原発があり、その知人が怒っていた。どうしたと聞くと、知事選があり、自民党系の立候補者が原発のある地に入ったそうだ。するとその地区の県議が立候補者に近寄り「原発のことを聞かれても、無言でいるように」と言ったというのである。テレビのマイクが偶然その声を拾い放送したのである。よくぞ放送してくれたと思う。
学界にも、原発に関係する利権がある。一つは、研究費で、政府は、原子力開発や安全対策などに関する研究を行う大学や研究機関に対して、多額の研究費を配分している。これは、国際的な競争力や技術水準を高めるための投資であるが、一部では「天下り」や「談合」などの不正があると指摘されている。もう一つは、人材育成である。政府は、原子力分野で活躍する人材を育成するために、大学や専門学校などに対して教育支援を行っている。これは、将来的な人材不足を防ぐための施策であるが、一部では「洗脳」や「偏向」などの問題があると指摘されている。大学でも原発に批判的な学者は出世出来ない。京都大学の熊取6人衆である。熊取6人衆は原子力利用の危険性について研究し、追究し続けてきた京都大学原子炉実験所(現・京都大学複合原子力科学研究所)原子力安全研究グループの6人の科学者の総称である。彼らをもっと知って欲しい。また京都大学ではないが高木仁三郎は絶対忘れないで欲しい。
しかし、原発の利権は、原子力発電の安全性や環境への影響についての議論を阻害し、事故やトラブルに対する対応を遅らせる要因ともなっていて、このように、原発の利権は日本社会に深く根付いた問題であり、福島第一原子力発電所事故を受けても揺るがない強固なシステムで、その解決には国民の意識や行動の変化が必要です。