庭の松を切った

人生

我が家の庭には大きな松が10本ほどある。剪定にはお金がかかり、同居の子供が家を継いだら、庭の維持費は随分負担になるだろう。子供の負担を考えて、お母さんから松のことを言われた。松を切ったらというのである。庭の松の一本ずつに思い出があり、処分するには心穏やかでなかった。母が松の根は耐震に良いと言って植えていた。大きな地震が3回あったが家は耐えた。姉たちが小学校の遠足で持ってきた松、子供達が生まれた時植えた松、私が休職していて復職した時植えた松等々、それぞれ思いは強い。でも子供のことを考えたとき、思い切った行動をとろうと思った。すべての松を全部切ることにした。庭師が2日間かけて切った。庭師の作業は見なかった。作業中、家の中で松を切る音に、何ともない思いに駆られた。

 作業が終わって庭に出た。切られた松の後見て、悲しみと言うより自分の身体を切られたような感じに襲われた。坂本龍一の番組の樹林で一本の木が切られる時、周りの木の電流に変化があったというのがあった。私にもそれと同じ電流の変化が起きたと思う。数日心落ち着かない日が続いた。

 しかし子供の日々の姿を見て、孫を見てこれで良いのだと思うようになった。私も終末期に入り色々なものに整理が必要である。これからは子供達の庭になることだろう。

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