私は霊魂の存在を信じる

人生

 昔私の家では,商売をやっている家の子を預かっていた。Sちゃんと呼ぶ。私が中学校の頃で、父と母は我が子のように可愛がっていた。当時珍しかった車に乗せて行楽地に遊びに連れて行ったりしていたようだ。やがてSちゃんも大きくなり預かるのをやめたが父、母は相当寂しかったようだ。そして時間が過ぎて父が亡くなり、私も就職して家を離れ、遠隔地に赴任していた。家には母が一人残ったが、Sちゃんが時々遊びに来てくれていたようだった。時間が過ぎ、私もいつしかSちゃんのことを忘れていた。そんなある夜、よく寝ていたと思うが、突然Sちゃんのお母さんに起こされたというか、飛び起きた。当時携帯電話もなく、夜中で下宿先の電話を借りるのも憚られ、外に出て公衆電話の前で朝の明けるのを待った。

随分時間は過ぎたと思う。5:00ころ家に電話をした。「Sちゃんのお母さんに何かなかったか」と。すると母は大変驚いて「Sちゃんのお母さんが昨晩亡くなられた」と言い、お前はどうして判ったかと聞いてきた。私が寝ていたときのなんだか判らないが、Sちゃんのお母さんの衝撃で起きたと、その時の様子を話すとびっくりしていた。Sちゃんのお母さんと私は、ほとんど接触がなかったので尚更驚いていた。Sちゃんのお母さんは癌を患い、闘病生活も大変だったようだが、昨晩病院で息を引き取られたそうだ。家の商売を気にしながら、子供を気にかけ、無念な想いで向こうの世界に行かれたものと思う

 そのときから霊魂という物があるのではと思っている。母も亡くなり、Sちゃんとも疎遠になったが、Sちゃんの家は商売もうまく行かなくなり、Sちゃんのお母さんが亡くなられ間もなく倒産した。Sちゃんは大変な想いをしながら育ったと思う。でも今は家庭を持ち幸せに暮らしている。私は本当に陰ながら、そうーと見守っている。Sちゃんのお母さんはこの世に未練を残し、さぞ悔しかっただろうと思う。

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