忘れてはならない福島第一原発事件

世相

 今福島はどうなっているのだろうか。最近はニュースにも殆ど取り上げられない。事故直後の復旧計画は最初から無理だと言われていたが、今は個々の作業が間に合わないと言うだけで、後は何も言わない。制御棒の抜き出しは途轍もない難問だろう。テレビでやっていたアメリカのスリーマイル事故の時は、制御棒が綺麗に抜け落ちて取り出しやすかった(福島と比べての話だが)。しかし福島第一原発の制御棒はぐちゃぐちゃに溶け落ち、取り出すのは大変な作業だろうと、アメリカの関係者が言っていた。さらにスリーマイル事故の取り出した制御棒は今借り置き場に置かれ、最終処分地は、いまだ未定とのこと。あの広いアメリカで処分地に困っているのだから、日本ではどうするつもりだろうか。地方の過疎地に、お金で頬を叩くようにして押しつけようとしている。それほど安全というのであれば、東京のど真ん中を最終処分地にすれば良い。福島第一原子力発電所事故で問題になった放射性セシウムの場合、セシウム134の半減期は2年、セシウム137の半減期は30年と長い。また、使用済み核燃料に含まれるネプツニウム同位体の中には200万年を超える長い半減期を持つものもある。人間はとんでもない物に手を出したものだ。

 事故直後福島第一の処理については、チェルノブイリのようにコンクリートで覆うとか色々言われていたが、今の手立てが果たして妥当だったのだろうか。あの時のテレビでの原子力賛成派、反対派入り交じって、私たちにも考えさせるよう議論が放映されていた。賛成派の方が反対派の方々に知恵があったら、助けて欲しいと言う言葉は良く覚えている。当初から地下水のことは話題になっていて、地下水の専門家に相談しては、との話も出ていた。貯まり続けるあの汚染水を見ると、もっと何か手はなかったのか。先ほど上げたコンクリートで覆う「石棺」が良かったのではという論もある。チェルノブイリでは、コンクリートで覆う作業に軍人が動員され、かなりの死者を出たようだ。福島の時は果たして人が集まっただろうか。あえて言えば国が呼びかけても集まらなかっただろう。しかし平成天皇ならば・・・と思ってしまう。あの福島第一原発の作業には,除染作業を含めて大勢の作業員が必要だった。作業員の質もばらばらで、いい加減な作業員や,許せないような作業もあったようだ。放射線は見えないだけに、やりたい放題だったのだろう。そして作業に支払われた費用の中抜きも公然と行われ,作業の士気を下げた。あの汚染水のタンクは最初から想像でき異常な風景だ。タンクに収まりきれない汚染水は垂れ流す。海洋に流すのは安全と言うが余りに無責任極まりない。近隣諸国への気遣いは本当にあるのだろうか。福島第一原発の廃炉計画は破綻していると言っていいだろう。

 50年まえの原発建設反対運動の時、原発はトイレの無いマンションと同じだから反対と批判されてきたが、今まさにその通りのことが起こっている。原発推進派は、この事をどのように考えているのだろうか。かつて原発反対派の中心にあった物理学者高木仁三郎は今回の事故を予見するような本を出していた。その高木仁三郎への不当な扱い、嫌がらせ、そして関西電力の反原発派町長の暗殺計画、プルサーマルに反対した福島県知事の佐藤栄佐久への国策逮捕など酷いものばかりである。広島・長崎での人類が初めて被爆したこと、ビキニ水素爆弾実験で、第五福竜丸が被爆、そして東海村JCO臨界事故など原子力に関わる事故などが続いた。JCO臨界事故での大内久さんを取り上げた本「朽ちていった命」は何度読んでも(読めないのだが無理をして読む)言葉にならない。大内久さんの「私はモルモットか」の叫びに国,電力会社はなんと答えるのか。福島第一原子力発電所事故での国、東京電力の対応はJCO臨界事故等から何の教訓も得ていない。繰り返しになるが、原発立地の地方にはお金で頬を叩く手法で,言うことを効かせる。はじめて福井で原発を作り制御棒を入れる時、管理職はコンクリート製の壁の後ろにいて下請けの作業員にいけと命じ、管理職は無事で、作業員は放射線被曝した。何という無責任で悪質なことか。

 ある原発関連会社の清掃業者は、清掃はやはり人間の手作業だという。地元だと放射線被曝を知っていて求人に応じないので、遠くから 放射線被曝に無知な人や障害者を連れてきて作業をさせたと聞いた。被爆線量を超えたら解雇、出身地に帰すと言う。作業員は地元に戻り病気になるが、それが被爆によるものと知らず死んでゆく。会社の社長は安全で丸儲け。この構図は原発ではいたる所で起こっている。何かあっても国も電力会社も上層部は責任を取らない。危険な仕事や責任は社員に、それが請負業者に、どんどん下がって零細企業が危険な作業を行い、何かあれば零細企業が責任を取る。その上中抜きが公然と行われる。福島第一原発での東京電力幹部の裁判はどうなることか。原発には巨大な金が流れている。

  そして今後福島はどうなるのだろうか。双葉町、大熊町,浪江町などはもう元には戻らないだろう。燃料デブリは、原子炉の内部にあった核燃料が溶けて固まったものである。福島第一原発では、1~3号機の原子炉からデブリを取り出す作業が進められているが困難を極めている。もしデブリが、取り出させたとしても、一時的に原発敷地内に保管されるが、その後の最終的な処分方法や場所はまだ決まっていない。引き受ける所はないだろう。福島は見捨てられたようなものだ。

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