水俣病とは、日本の熊本県と新潟県で発生した公害病の一つである。原因は、化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物によるもので、これを含んだ魚介類を食べた人々が神経障害を起こした。水俣病は、高度経済成長期の日本における四大公害病の一つとして知られている。
水俣病の歴史は、1956年に熊本県の水俣湾周辺で不明な神経疾患が多発したことから始まる。当初は「奇病」と呼ばれていたが、やがて地名をとって「水俣病」と呼ばれるようになった。1965年には、新潟県の阿賀野川流域でも同様の症状が見られ、これは「第二水俣病」と呼ばれた。
水俣病の原因物質は、メチル水銀化合物であることが1968年に厚生省によって認定された。メチル水銀化合物は、チッソ（株）の水俣工場と昭和電工（株）の鹿瀬工場がアセトアルデヒドや塩化ビニルなどを製造する際に副産物として生成し、無処理で海や河川に排出していたものであった。メチル水銀化合物は、海の中で魚介類に直接吸収されたり、食物連鎖を通じて生物濃縮されたりして、人間にも影響を及ぼした。
水俣病の主な症状は、運動失調、感覚障害、視野狭窄、聴力障害などで、これらは、メチル水銀が神経系の特定部位に強い傷害を与えるために起こる。特に胎児や乳幼児には重篤な影響があり、妊婦がメチル水銀を摂取すると、胎盤を通じて胎児にも移行し、先天的な神経障害を引き起こし、これを「胎児性水俣病」と呼ぶ。
当初水俣で猫の大量死が発生し、さらに漁民からも発症したが原因が分からず奇病と扱われた。水俣の海産物の価値は下がり、水俣の漁民は食べ物として海産物に頼らざるを得なかった。それが一層被害の拡大につながった。住民は当初からチッソを疑っていたが水俣はチッソで成り立つ町でチッソに勤める住民も多く、チッソを批判するものを差別した。
しかしチッソは動かなかった。かえって汚染水の排水を変更したら，そちらでも水俣病が発症しチッソの汚染水が原因であることが明らかになった。チッソ病院の細川一のチッソが原因との実験結果を会社に報告する。でもチッソはこれらを隠蔽した。熊本大医学部で水俣病は有機水銀が原因とするが、それでもチッソは有名大学教授を使い反論工作を行う。
その後の国、チッソの動きは尋常でない。いつ、どこでは忘れたが、「御用学者」の「悪いのは有機水銀を飲んだ魚が悪い」と言ったのには呆れ，驚いた。東京工業大学の清浦雷作、東邦大学戸木田菊次等、専門家と言われる学者は自分の研究発表、発言がその後違っていたことが分かったが、謝罪や何の動きも取らなかった。水俣病の患者達に眼は向けていない。酷い。福島第一原発事故での「原発は安全です」をテレビで連呼した東大教授関井直人等は、その後無言ある。無責任極まりない。
政府が発病と工場廃水の因果関係を認めたのは１９８６年である。似たような水銀事件は新潟でもあり、昭和電工が相手だった。これも大変だった。まだ終わっていないが。
また患者とその家族に対する偏見、差別は，広島・長崎の原爆病の偏見、差別と違った側面がある。水俣はチッソの勤める人も多く，チッソの城下町である。その町でのチッソ側の人たちの漁師達への仕打ちも断罪されるべきと思う。
戦後の高度成長期に起こった公害病は、その発生、経過、結果に関わる人間、特に会社のお偉いさん、御用学者、そして市井の庶民より大企業に気配りする政治家に注意する必要がある。水俣病での本当に御用学者の酷さには呆れるばかりで、今は原発でもしかりである。
