映画「誰も守ってくれない」のストーリーは、姉妹2人が殺害されるという事件が起こる。その容疑者としてある少年が浮上する。その時勝浦刑事(佐藤浩市)がある事件の影響から、別居した奥さんと、やり直そうと計画していた旅行のための休暇を取り下げられ、その少年の加害者家族の保護を命ぜられる。容疑者宅に行くとマスコミ、野次馬で騒然としていた。加害者家族の夫婦は離婚、再婚で姓を変え、妹は就学義務の免除をうけ、それぞれ別々の場所で事情聴取を受けることになる。妹はまだ事態を理解できていない。勝浦は妹を家から連れ出し、追いかけるマスコミを避けながらホテル、自分のアパートと転々とする。妹が携帯を家に忘れたというので勝浦が家に戻ると母親が自殺をしていた。インターネットでは加害者家族への追求も加速し、妹を保護する勝浦の家族にもそれは及ぶ。勝浦は最後には、過去の事件で救えなかった子供の親がやっている、今回の旅行に予定していた宿に妹を保護する。被害者家族の宿に加害者家族をかくまったのである。その宿も見つけられ投石を受ける。妹は頼りにしていた学校の友達にも裏切られる。海辺で勝浦は妹へ「これはずーと続く」「兄の帰ってくるのを待ってやれるはお前だけだ」の言葉をかける。必死に妹を守る勝浦にいつしか心を開き事件当日のことを語り始めると言うものである。
加害者家族の悲劇は、あさま山荘事件での板東國男の父親の自殺、宮崎勤の父親の自殺・姉の辞職、秋葉原連続殺人事件の加藤智大の弟の自殺など数多くある。加害者家族は、事件が起きると突然日常生活が一変する。マスコミの取材や報道、そしてインターネットによって、自宅や勤務先、学校などが特定され、プライバシーが侵害されることになる。近所の人や知人からは冷たい目で見られたり、避けられたりすることも少なくない。インターネット上では、ひぼう中傷や脅迫などの書き込みが殺到する。加害者家族は、事件に対する責任や罪悪感をもつとともに、被害者や遺族への同情や謝罪の気持ちを抱くが、しかし、被害者や遺族と直接対話する機会は少なく、謝罪の方法やタイミングが難しいと思われる。裁判や刑務所についても、知識や情報が不足していることが多く、不安や困惑を感じられる事だろう。加害者家族は、精神的に追い詰められることが多く、ある調査によると、加害者家族の約9割が自殺を考えたことがあると回答している。また、離婚や退職、引っ越し、名前の変更など、人生に大きな影響を受けることもあり、さらに加害者家族の苦しみは、親戚や友人などにも波及し、当事者ではないにもかかわらず、社会から孤立してしまうことが多くある。しかし、加害者家族に対する支援は想定されておらず、支援団体や相談窓口も少ないのが現状である。そのため、加害者家族は誰にも相談できずに苦しみを抱え込むことになる。加害者家族を支えることは、被害者や遺族への配慮に反すると考える人もいるかもしれないが、しかし、加害者家族を支えることは、被害者や遺族への敬意を欠くことではない。むしろ、加害者家族を支えることは、事件に向き合うことであり、被害者や遺族への謝罪や償いにつながることでもある。
しかし加害者家族の中には居直り、線香一つあげにも行かず、謝りもせず腹立たしいものもいるが、多くは嘆き、苦しみ生きているのであろう。
犯罪被害者支援法も長い時間をかけて成立した。法で被害者家族を癒やすことはできるものではない。加害者家族支援に至ってはとても難しく、支援などは考えられないという感情を抱くケースも多数あり暗澹たる思いになる。